閉店時間 (扶桑社ミステリー ケ 6-9)

閉店時間 (扶桑社ミステリー ケ 6-9)

ケッチャムほど読後感が厭な作家はいないと思う。読み終えたあと心のなかは暗黒に染まり脳内は血まみれ妄想で真紅。内臓ぶちまけて腹は切り裂かれ断末魔の叫びとそしてうめきが私ののどをぐるると鳴らす。だが、そこがいい。容赦なく殺すし残酷シーンは多いし、『結婚式とレイプの準備が重なって忙しい一週間だった』なんて文章でこれから結婚するカップルの説明をする物語は、そんなにないような気がする。でもケッチャムの場合、いつもそこに愛と正義があるのだ。
ホラーとかスプラッタものって、そこに出てくるキャラクターの正義と愛が真実かどうかを試す物語のように思える。正しい人がひとりとして出てこない場合は、読んでる私自身の正しさを試されている。
私にとっては、そういう形がホラーについての読み方よ。読み終えたあとしみじみと「ああ、私はいま生きてるなあ」と思うのだ。
これは中篇集でした。