好きだから辛口でいきます。
まず「おもしろい」というのは前提として。
以下、辛口意見につづく。
読んで最初「停滞してる?」と感じた。あるいは「川上さん、年とった?」と。もしくは「もう少し練ってから書いたら?」とも。
まあ、自分が年とって疲れてるからかなあとも思うので再読したらまた感じが違うかも。
いつもの川上さんで、世界観もキャラもキャラの掛け合いも安定した川上稔節。
だけど毎回確実にある「揺らぎ」が薄い。これは文章の向こうにある空気というか、雰囲気のようなものなので、私の体感でしかないのだが……。
川上さんの小説って、いつもその向こうに少年性が紛れてたように思う。それはどこか遠くから「早く来いと俺たちを呼ぶ声」。
私にとってはRCサクセションの「雨上がりの夜空に」の一節のような。雨上がりの夜空に吹く風が早く来いと俺たちを呼んでる。ジンライムのようなお月さまが空にかかり、そして風が俺たちを呼んでる。その空気感と揺らぎと焦燥と。それが薄まっているような気がする。
ゆえに「守りにはいったの?」という気がしないでもない。
「もっと、こっちに、もっともっとすごくかっこいいもんが、俺の知ってるかっこいい世界があって、だからそこに、おまえらを連れていってやるぜ」みたいなそういう気負いがね、あったの。そこが大好きで大好きでたまらなくて、ずっと読んでたの。
共にワクワクしようぜというのが。作者の川上さんに手を引かれて、どきどきしながら、そのかっこいい船や戦闘や人形や魂やら武器やら見にいったの。
その「手の引き」が、薄いの。
ああ、うまく説明できないが。
なんか「手こずってる?」つーか、なんかこうまだ「うまく手を引くには、ちょっと、まだ、こなれてない」ってことか??
「それでも、ついてこられる奴だけ、おれの手を取れ」な雰囲気が、年を取ったのかなあと感じさせるんだろうな。
年取ったらさあ、ドキドキしながら「俺のこれ、かっこいいんだよ、見て見て」じゃなくなるもんな。ドキドキがね、なくなるんだろうね。かっこいいことの自信にみなぎり、気にいってくれると自信を持ち、紳士的にエスコートしてくれるのが年よりの手引きか。や、まだ紳士的な領域でもないんですが。つーかこの厚さは……金持ちの暴君の手引きだな。初心者にはおすすめできないな。むむむ。

もっと感覚として「年を取る」か「若がえる」かの、どっちかに針振ってくれというのが初見の感想。
たぶん年を取るしかないのだろうが、そうしたら量も、もっと分厚くなるんだろうなあ。

武蔵が空を波立たせているところなどは、相変わらずかっこいいっす。