バタバタしてて茶碗を割った。
だいたい忙しくて気持ちが目の前のことに向かっていないときに私は瀬戸物を割る。
そして瀬戸物が割れたときは祖母の教えを思いだす。
厄落としだと思いなさい。自分や自分の周囲の誰かの災難を瀬戸物がかわりに引き受けてくれたのだから、割れた瀬戸物にありがとうと感謝するといいんだよ。
そんなわけで、割れた茶碗に感謝して、包んで、袋に入れて、ワレモノと書いて、袋をきゅきゅきゅと結ぶ。
焦ると動きが荒くなるんだよね。だからよく瀬戸物を割るのだ。

焦ったところで一日はどうしたって二十四時間で、私以外の人間まで私の思うように動くことなんて無理で、私は超能力がないから瞬間移動も分裂もできなくて、だからまあ――それでも日々は過ぎていくのである。
そして物事がきんちとうまくいかなかったことなど、結局は、ないのだと。
ちゃんとすべては最終的には落ち着くところに落ち着くのだ。落ち着かせるのだ。