治療して仕事してビアガデートしてあとなにした?
イカ食べてたことだけは確実。毎日スイカ食べててだから毎日のようにスイカを買いにいってる。こんなに日々スイカを食べるのは人生初かもしれない。子ども時代ですらここまでスイカ食べてない。

年を取ると苦労したことのすべてを綺麗に忘れてることがあって、いいことだなと思う。
育児の苦労ってもうあまり覚えてないのよね。記憶してるけど体感としてリアルによみがえってこなくなってるというか。介護のほうがまだ生々しいなあ。介護はラストが好きな人との死別で終わって卒業だったから、その印象で、生々しいのかも。
でもどちらも、傷とか怪我とかの痛みなどを「痛かった」とは説明できるけど、その質感とか本当の痛みとかはすっぱりと忘れ去っているのと同じ感じに、忘却の彼方。漠然とした輪郭だけが残っているような。


育児って楽しかったっけと思い返すと、楽しく過ごしたいから、子どもをだまして過ごしたことやら、やってみたいという理由だけで自分の家の外壁にみんなで絵を描いて放置したり、土を掘って水を溜めてそのなかに突入して本気の泥遊びをしてみたりなどのことは思いだせる。子どもを隠れ蓑にして、子育てとして遊んでますよというふりをして、自分がやってみたいことをしたことだけは覚えているよ。
だが別に楽しいとか楽しくないとか関係ないよな。育児って義務だし。産んだら育てないとの義務で仕事なので。
つらかったかというと、途中から「どーでもいいや」みたいな感じで、つらくもなくなっていたという。
やることたくさんありすぎて、嫌だとかいいとこ思えなくなって麻痺しとったのだろうか、あれ。
娘に一番手こずったのがたぶん四歳前後で、息子に一番手こずったのが小学校三年から六年までだった。
奴らは危険なことに目がないし、ちょっと怒るとすぐ家出するし、帰ってこないと警察に頼むことになるし、寝ないで待ってたらニコニコとパトカーに乗って帰ってきてちょっとヒーロー気分になりやがってとか、まあいろいろともやもやしたものも思いだしてきたぞ。

いまになってみれば気の合う奴が自分ちの子どもで良かった。
これで趣味とか一切あわない奴に生育されてたらむかつくことだろうよ。